7.プライマリーバランス

プライマリーバランスについて

平成30年1月11日 大井 了

【はじめに】
一般的なプライマリーバランスとは、日本の国の収支バランスである。 簡単に言ってしまえば入ってくるお金と出ていくお金のバランスである。具体的には、基礎的財政収支と言い、国の歳入から国債収入を除いたものと、国の歳出から国債の利払いと国債償還費を除いたものの差額である。つまり、国の借金関連を除いたときの収支ということになる。 国の収入は言うまでもなく「税収」だが、所得税・法人税・消費税を中心に、たばこ税や相続税など、国税による収入のことである。国の支出とは、年金や医療費などの社会保障費、地方に分配する地方交付税交付金、それから、公共事業・教育・防衛費などがある。
つまり、この国の収入が国の支出を上回れば、「プライマリーバランスは黒字」となり、国の収入が国の支出を下回れば「プライマリーバランスは赤字」となる。
それでは、現在の日本のプライマリーバランスはどうなっているのだろうか。2015年度の政府の予算を見ていくと、国の税収が約54.5兆円となっている。支出は、社会保障費が約31.5兆円、地方交付税交付金が約15.5兆円、公共事業・教育費・防衛費が約16.4兆円、その他が9.5兆円となっており、合計で約72.8兆円となっている。収入が54.5兆円に対して、支出が72.8兆円である。
それでは、なぜ日本の財政はこんなにも赤字になってしまっているのだろうか。それは、「社会保障費の増大」という一言に尽きる。1990年度に比べて、税収やその他の支出はさほど変わっていないのに、社会保障費だけ3倍近くに膨れ上がってきている。なぜ社会保障費が増大しているのか。少子化・超高齢社会となった現在の日本において、年金の支払いや医療費支払い、あるいは介護費用が増大していったからである。
収支のバランスを保つには、「収入を増やす」か「支出を減らす」の二択しかないわけだが、「収入を増やす」のはなかなか厳しいであろう。増税と言うのは逆に景気にブレーキがかかり、税収が落ち込む可能性さえあると思える。  そうすると、「支出を減らす」しかないわけであるが、いったいどの支出を減らせばいいのか。この問題点については、今後必ず解決していかなければならないことだと思うし、国民一人一人が頭の片隅に置いておかなければいけない問題だと、個人的には思っている。

【日本歯科大学校友会が直面しているプライマリーバランス問題】
ここ数年、校友会本部の組織活動を行うことが会計的に問題を生じ始めているが、今のところは会務運営の努力によって支障が出るようなことはない。しかし、一般会計単年度の収支は毎年若干の赤字となっていて、早急に全体的な見直しと共に直接的な対策が必要と考えられる。

1、収入に関する問題点と解決策
一般会計における収入は、その多くが校友会会員の会費収入で賄われていて、その会費収入が年々減少している。すなわちそれは、会員数の減少を意味している。平成18年5月では会員数10090名・会費免除会員数1095名であったが、平成27年5月では会員数9191名・会費免除会員数1289名となり、ここ10年で約1000名減少している。死亡・中途退会者の増加(毎年100名ほど)、卒業時新規入会者数の減少(ここ数年の平均では生命歯学部約70%、新潟生命歯学部約90%)、4年間会費支払い済み後の校友会継続率の低下などがある。今後団塊の世代の先生方と新潟生命歯学部が開設された67回卒以降の先生方の2回のピークで会費免除会員が多くなることや、卒業生や保護者の意識の変化などによって、会員数の減少に歯止めがかかるわけではない。
昨年度6月に会則の改正を行い、新たな会員種別の設置をした。現在の正会員を第1種会員と第2種会員とに区分した。ここで規定する第2種会員とは第1種会員の自宅または診療所等に同居、または所属する本学卒業の家族または勤務者を総称したものとしている。この改正の結果、第2種会員への入会が増加傾向となっている。
会員対策委員会において、本学短期大学(東京短期大学・歯科衛生学科・歯科技工学科、新潟短期大学・歯科衛生学科)、他大学卒業者(学内勤務者)の入会を引き続き検討を重ねている。
新卒者の入会のために6年生時に校友会・歯学会入会オリエンテーションを開催、卒業時には校友会入会歓迎式・歓迎会を開催している。また、合同合宿においてスポーツ・文化・学術大賞校友会特別表彰を行い、富士見祭・浜浦祭や歯学体結団式・園遊会へ参加し、校友会からも支援をしている。学生に向けて年4回KOYU timesを発行、3年生・5年生に対して特別講義を開催している。学術フォーラムやD-Muse(女性歯科医師の会)などへの参加呼びかけをし、新規入会者の獲得と4年間の会費前納後の会員継続率を高めるため、昨年度からは卒後4年間に限りこれらの事業への参加費を無料としている。
また、校友会では大学のご理解、ご協力により卒後50年・25年の校友会会員を大学が行う創立記念式典(6月1日)に参列することのできる創立記念式典特別参列制度(ジュビリー5025)を開催し、参列者に対して校友会から記念品の特製バッジ(卒後50年には金色、卒後25年には銀色)を送っている。このジュビリー5025を機に入会される卒後25年の先生方もいる。

2、支出に関する問題点と解決策
校友会本部の組織活動の縮小は、根本的な問題の解決にはならないと思われる。事業費の削減は限界にきていると考えるが、更に詳細を詰めていくことによって削減を目指すべきであろう。
校友会本部役員の各地区会員大会や各都道府県の総会への出張に関しては、既に人数・交通費・宿泊費などで削減を図ってきているが、地区副会長・地区理事の理事会出張費も負担となっているのが現状である。本年度より校友会本部の副会長、常務理事の人数を削減、同時に地区副会長・地区理事も削減し、出張経費の軽減を図っている。
会員功労金支給制度だが、多くの会費免除会員が会費免除の申請時に同時申請するようになってきている。この会員功労金支給の一般会計支出に占める割合が21%を超えてきていて、会計担当常務理事からいくつかの対策案が提案され、協議を重ね早急な対応を進めている。

【まとめ】
先に述べた2025年問題と67回卒以降の先生方が会費免除会員になる10年先には、校友会のプライマリーバランス問題は避けて通れない課題となっているはずである。
校友会本部では、会員資格・新入会の課題、会員功労金支給の課題を、ここ数年のうちの総会に議案を提出、制度施行を目指している。それまで、数度の理事会、全国会長会議を開催しコンセンサスを取っていきたい考えである。
今後も皆様のご理解とご協力を賜りたいと考えている。

【参考文献】
3分でわかるプライマリーバランスの黒字化と日本財政の問題点について
平成27年・28年度校友会本部会員対策委員会答申書