平成29年5月18日 橋本博之
【はじめに】
「医院・診療所」では患者は通院で治療を受けるが、それに対して「病院」は主に入院治療を必要とする患者を対象にしている。更に大学病院や総合病院などの「大病院」はより高度な医療を必要とする患者の治療を行っている。街の「医院・診療所」と「病院」はそれぞれ違う役割を持っている。
【病院】
病院とは、傷病者を収容して診断・治療する施設をいい、外来患者に対しては診療所の役割もする。医療法では医師または歯科医師が公衆または不特定多数人のために医業や歯科医業を行う場所でベッド数が20床以上の収容施設を持つものを病院とし、医師または歯科医師、看護師、その他の従業員などの数、施設の種類などが省令で定められている。病院の開設には、すべて都道府県知事の許可が必要である。各科を診療し100ベッド以上の収容施設を持つ病院は総合病院といわれる。国立病院機講や都道府県、市町村などが開設する公的医療機関としての病院もある。また各種の病床をもつ一般病院に対して結核、精神病、感染症など不特定の患者だけを扱う特殊病院もある。病院という名は、日本では1868年東京に設立された「大病院」が始まりとされている。
【診療所】
診療所とは、医師または歯科医師が公衆または不特定多数の人の医業または歯科医業を行う場所であって患者を入院させる施設(病床)を持たないもの、又はベッド数が19床以下の患者を入院させるための施設(病床)を有するものを指し、主に外来患者を診察・治療をする。日本においてもまた、世界の多くの国では、診療所は民営・公営の両方が存在し、その地域で需要のあるプライマリ・ヘルス・ケアを提供している。診療所の中には、著名病院より大規模な組織であったり、病院や医科学校を併設しながらもクリニックの名称のままであるところもある。日本の医療においては、医療法における医療機関の機能別区分のうちの一つであり医師もしくは歯科医師が診療を行う場所とされている。
【病院の種類】
病院の種類は開設者別、機能別、症状別に分類される。
1)開設者別分類
①国立病院
厚生労働省、独立行政法人国立病院機講、独立行政法人労働者福祉機講など。
②公立・公的・社会保険関係法人の病院
都道府県、市区町村、地方独立行政法人、日本赤十字社、共済会、国民健康保険団体連合会など。
③大学病院
国立大学、公立大学、私立大学。
④一般病院
公益法人、医療法人、社会福祉法人など。
2)機能別分類
①特定機能病院
ほとんどが大学の附属病院であり、高度医療を提供し、医療技術の開発・評価を行い、研修が出来る病院。400床以上の病床数を持ち、厚生労働大臣によって認可される。
②地域医療支援病院
医療機器などを一般病院や診療所と共有で利用し、かかりつけ医を後方支援する病院。200床以上の病床数をもち、都道府県知事によって認可される。
③その他の一般病院
特定機能病院、地域医療支援病院以外の病院。患者はまず、これらの地域密着型病院を利用することが多い。
3)症状別分類
国の方針により、病院は期間や症状によって分かれている。そのため治療が終わり、症状が落ち着くと転院をすすめる事がある。目的に沿った病院を選択することが大切である。
①回復期リハビリテーション病院(病棟)
例えば脳血管疾患または大腿骨頚部骨折などの患者に対して食事、更衣、排泄、移動、会話などのADL(日常生活動作)の能力向上により寝たきりの防止と家庭復帰を目的としたリハビリテーションプログラムを医師、歯科医師、看護師、理学療養士、作業療法士などが共同で作成し、これに基づくリハビリテーションを集中的に行うための病院(病棟)。国の方針でリハビリテーションを受けられる期間が決められている。
②地域包括ケア病院(病棟)
療養型病棟(病床)は医療法によって、長期にわたり療養を必要とする患者のための病床として設定され、定額診療を行っている。医療の必要性が高く、リハビリや療養を必要とする患者で、症状が安定している患者対象とした病床。医療保険と介護保険の病床がある。
③緩和ケア病棟
緩和ケアと症状の進行したがん患者が抱える痛みや不快な症状、不安など、がんの進行に伴う身体的、精神的苦痛を緩和する治療やケアを意味し医師、看護師、歯科医師、薬剤師、栄養士、ソーシャルワーカーなどがチームとなって、患者・家族のQOL向上のため必要な支援を行う。緩和ケア病棟は厚生労働省が定めた一定の施設基準を満たし、都道府県の承認を受けている病棟。
【病院と診療所の役割】
診療所が外来中心、病院は入院中心と機能分担し、相互連携により患者の診察・治療をスムーズに行うようにするが、診療所は病気の初期治療や安定期の治療、また在宅患者の治療を主として担当し、病院の専門医は、より重く複雑な病気の患者の治療や高度医療機器を使用した診断・治療を担当する役割がある。
◆診療所から病院へ
身心の症状に異変がある場合は、近くの診療所やかかりつけ医にかかりますが診療所では診断の上、専門的な治療や入院が必要な場合には患者と相談し、適切な病院を紹介する。その際に紹介状を書き、紹介状には病気の経過、それまでに使った薬や検査の結果を記載し診療所から病院にスムーズに引き継ぐようにする。
◆病院から診療所へ
病院では、診療所から紹介された患者などに対し入院あるいは外来治療後、症状が安定し診療所外来や往診だけで済むようになった場合には、患者にかかりつけ医の診療所に入院中の経過などを報告し、その後の対応をお願いするなどの連携をとる。
【地域医療連携システム】
地域の医療機関から自らの施設機能や規模、特色、地域の医療の状況に応じて医療の機能分担や専門化を進め、例えば健診機関と診療所、診療所と病院、健診機関と病院、病院と病院など各医療機関が相互に円滑に連携を図り、それぞれの医療機関の有する機能を有効かつ迅速に活用することにより、より一層受診者がそれぞれの地域で継続性のある適切な医療が受けられることができるようにするシステムである。
【病院と医療費】
日本の医療・福祉制度の原則は「申告制」である。通院する場合、大きな病院ほど医療費がかかると思われがちだが、大病院の方が小さな病院より安くなるケースがある。「特定疾患療養管理料」は医療機関の規模によって細かく分けられている。その金額は、実は小規模な病院ほど加算される額が多い。19床以下の「診療所」が最も高くなる一方で、200床以上の「大病院」には加算されない。そのため大病院に通院するほど医療費が安くなる。厚生行政では急を要する患者や先進医療を受ける患者は大病院、それ以外の患者は中規模の病院や町の診療所という役割分担を進めている。そのため長期の通院が必要な慢性疾患の患者を中規模病院や診療所が積極的に引き受けるようにインセンティブを与えている。
【まとめ】
病院と診療所の役割分担がありますが、実際には風邪等の軽症な患者も大病院志向が強く、大病院に集中し待ち時間が長いだけでなく、本当に高度で専門的な診療が必要な患者にまで影響していることもある。大病院は高度医療が中心となっているので専門の診療科が細分化されていて、何科を受診してよいか解らない場合が多く専門外の病気であったりするので、近くの診療所あるいはかかりつけ医で十分な場合もあるので時間的な無駄を省くためにも、医院・診療所を受診するべきである。歯科においても診療所では困難な治療、また治療時、全身に影響のある患者を治療する場合、病院との連携は不可欠である。