3.歯科衛生士法の平成26年改定について

歯科衛生士法の平成26年改定について

 平成31年2月21日 宮川慎二郎

【はじめに】
歯科衛生士法は、国民の歯科疾患の予防及び口腔衛生の向上を図ることを目的として、昭和23年に交付、施工された。業務内容は時代に合わせ、段階的に歯科予防処置、歯科診療の補助、歯科保健指導と広がっていった。平成26年6月25日に公布された「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」により、歯科衛生士法が改正された。この平成26年改正を中心に歯科衛生士法の改正について記載する。

【歴史】
日本に歯科衛生士が誕生したのは昭和23年である。戦後のこの時期は、まだ衛生状態が悪く、むし歯のある国民が大半であった。この年に歯科衛生士法が制定され、都道府県が実施する試験に合格し、知事から免許を受けた人が、歯科衛生士の資格を得た。この頃の歯科衛生士の仕事は、保健所で働き、主にフッ素塗布することだった。それが昭和30年の法改正で、歯科診療を補助することも歯科衛生士の仕事になり、病院や医院で働けるようになった。平成元年からは歯磨きの方法を教えるといった歯科保健指導も仕事に加わり、平成4年から国家試験になり、大臣の免許になり現在にいたっている。

【平成26年改正】
改正の内容
1 歯科衛生士が予防処置を実施する際には、歯科医師の指導の下に行うこととし、「直接の」指導までは要しないこととしたこと。(法第2条第1項関係)
2 歯科衛生士が業務を行うに当たり、歯科医師その他の歯科医療関係者との緊密な連携を図り、適正な歯科医療の確保に努めなければならないこととしたこと。(法第13条5関係)
3 歯科衛生士の定義における「女子」を「者」に改正するとともに、附則第2項の「男子」への準用規定を削除することとしたこと。(法第2条第1項、附則第2項関係)
留意事項
1 予防処置に係る改正規定は、法第2条第1項に規定する予防処置に係るものであり、この改正により、同条第2項に規定する歯科診療の補助(以下「歯科診療の補助」という。)及び同条第3項に規定する歯科保健指導(以下「歯科保健指導」という。)の取扱いに変更が生じるものではないことから、法第13条の2及び第13条の3に規定する歯科医師と歯科衛生士との関係に変更が生じるものではないこと。
2 歯科衛生士が予防処置と同様の内容の行為を行う場合であっても、歯科疾患を有する者に対して当該行為を実施する場合は、歯科診療の補助に該当し、歯科医師の指示の下に行われる必要があるので、特に、歯科衛生士が病院や介護施設等において業務に従事する場合には留意が必要であること。
歯科衛生士は、歯科保健指導を行う場合において、法第13条の3の規定を遵守した上で、歯科医療機関にあっては主治の歯科医師と、病院や介護施設等にあっては協力歯科医療機関の歯科医師又は主治の歯科医師等との緊密な連携を図るよう努める必要があること。
3 法第2条に係る改正規定は、歯科医師以外の者が歯科衛生士に指導又は指示を行うために設けられたものではないこと。

【歯科衛生士法改正(第2条第1項関連)にともなう主な経緯】

190225表1

【考察】
口腔の健康は、生き生きとした生活を送るための基本である。またさまざまな調査研究から口腔の健康と全身の健康の関係が明らかになり、歯科に関心が高まっている。歯の喪失の多くの原因が歯周病であり、国民の多くが罹患している歯周病予防に衛生士の活躍が期待される中、歯科衛生士法が改定された。
歯科衛生士は、予防処置として歯石やプラーク等を除去することや,フッ素等の薬物塗布を行うことができるとされているが、「歯科医師の直接の指導」の下に行うことが必要とされていた。
そのため、歯科衛生士が予防処置を行う際には、歯科医師がその場に常に立ち会うことが必要であったが、歯科医師の確保が困難な地域においては、保健所が、フッ化物塗布を行うことが困難となっている等の支障が生じていた。
これらのことを踏まえ、歯科医師の指導の下で行われる必要があるが、歯科医師の判断により、歯科医師の常時の立会いまでは要しないこととした。
なお、歯科衛生士が業務を行うに当たり、歯科医師等の歯科医療関係者と緊密な連携を図ることが必要不可欠であることから、その旨の規定を新たに追加することとした。
歯科衛生士の活躍の場を広げる今回の改定は、国民の健康管理には大変良い事で、大賛成ではあるが、歯科医師の指示の下の拡大解釈で歯科医師不在の医療行為にならないように凝視していく必要はあると感じられた。さらに、健康寿命の延伸に歯科の重要性が国民に広まって欲しいと強く感じた。

【参考文献】
厚生局労働省医政局長通知文 医政発1023第8号
歯科衛生士法 法律第二百四号(昭二三・七・三〇)
日本医師会    日医発第784号(地I 184号)