3.消費税の歴史

消費税の歴史

令和2年1月16日 小杉京子

【はじめに】
令和元年10月1日より消費税が10%に引上げられた。10%になったのをきっかけにもう一度消費税について振り返り、消費税の歴史について考察する。

【消費税の歴史1)
消費税法の施行は平成元年だが、消費税導入の議論は今から40年前からされていた。昭和54年大平正芳首相の時に、一般消費税導入が打ち出され閣議決定されるがその10月の選挙で自民党が大敗し、施行できなかった。昭和62年中曽根康弘首相の時に売上税法案が国会提出されるが、小売業界からの反発が大きくさらに選挙で自民党が破れ廃案となった。昭和63年竹下登首相の時に日本初の付加価値税である消費税が導入され翌年平成元年4月1日より税率3%消費税がスタートした。平成6年細川護熙首相の時に国民福祉税導入を構想し、消費税廃止と国民福祉税(税率7%)導入を記者会見で発表するも、即日白紙撤回となった。同年村山富市首相の時に消費税増税5%が決定され、平成9年橋本龍太郎首相の時に消費税5%がスタートした。平成16年小泉純一郎首相の時に税込み価格の表示が義務付けられ、消費税が含まれた価格表示となった。平成21年鳩山由紀夫首相に自民党から民主党に政権交代し、平成23年野田佳彦首相の時に消費税増税法案が提出され可決された。軽減税率導入も民自公3党で合意され平成26年に8%、平成27年に10%とする案が税制調査会に提出された。平成26年安倍晋三首相の時4月1日より税率8%消費税がスタートした。平成27年10月の増税は延期に、平成29年4月の増税も再延期され、令和元年10月1日より消費税が10%に増税された。

【消費税が導入された理由2)
理由の一つは今の日本は少子高齢化問題を抱えており、少子化により現役世代が減少することにより国の収入が減少している。他方、高齢化による医療費や年金などの社会保障費が増大しているが、国の収入を法人税と所得税などに頼っている現状では現役世代に大きな負担をかけることになる。そこで消費税を導入し税負担を全世代にかけることで、現役世代への負担を集中させずに済む。
もう一つの理由は所得税が累進課税であるのに対し、消費税は収入の差に関係なくすべての国民が均等に負担する。また消費税が導入される前にも間接税(物品税・石油税等)があったがそれらは消費税を回避するために導入されていたもので、特に国民の生活水準も上昇し贅沢品に手が届く消費者が増加してきたため時代に合わなくなり、間接税の仕組みも変化し消費税が導入された。

【段階的な増税と軽減税率】
消費税の歴史に記載したとおり、消費税3%導入後から8年後の平成9年に5%に増税されたがこの増税に地方消費税1%導入された。5%は17年続き平成26年に8%に増税され、内訳としては国税6,3%地方税1,7%となった。その5年後の令和元年に10%になり、30年に及ぶ消費税の歴史の中で初めて軽減税率制度が導入された。これは一部の消費税率を8%に据え置く制度で日本でははじめての導入となるが、世界ではすでに多くの国では導入されている。8%の軽減税率対象としては野菜・肉・魚・お米・弁当・ミネラルウォーター・テイクアウト・出前・持ち帰り容器に入れた商品などがあげられる。10%の対象には、外食・酒類・医薬部外品・水道水・ペットフードなどがある。その他に消費税増税による影響を考慮し期間限定でキャッシュレス決算によるポイント還元制度や、マイナンバーカードにポイント加算やプレミアム付き商品券の発行や住宅ローン減税の拡充や自動車購入時の税金を減税や税抜き価格表示の延長などが実施されている。

【まとめ】
消費税は平成とともに始まり30年間の間に少しずつ段階的に増税されてきたが、選挙のたびに各政党が消費税増税について様々な主張をしていたことが記憶に新しい。令和元年10月からは今までとは違う複雑な消費税制度になり軽減税率やポイント還元制度をうまく活用しながら賢い消費者になっていくことが望ましいと思う。今回は一般的な部分での消費税について考察したが、我々の実際に直面している歯科界において10%増税がどう影響をもたらしているかの現状についても引き続き考察していきたいと思う。

参考資料
1.税務研究会ホームページ zeiken.co.jp
2.内閣府ホームページ www.cao.go.jp