1.算定日記載

算定日記載について

令和元年9月19日  宮川慎二郎

【はじめに】
ICTの普及に伴い現在診療報酬請求書において、電子媒体を使用しての請求が原則義務付けられている。これにより従来では非常に煩雑であった統計調査が極めて簡単に行えるようになった。
突合点検縦覧点検について以前、記載させていただいているが、今回は算定日記載の義務化による影響について記載させていただきたい。
平成24年4月請求分から始まった新しいレセプト審査の仕組みや問題点について考えてみたい。

【算定日記載とは】
厚生労働省保険局医療課より平成23年12月22日付で各関連部署に事務連絡が出された。内容は電子請求によりレセプトを提出する場合、「診療報酬請求書等の記載要領等について」(最終改正;平成 22年3月26日保医発0326第3号) に記載されている。簡潔に言えば、請求する各算定項目の算定日を記録して請求することを平成24年4月診療分から保険医療機関に求めたものである。

【算定日記載の影響】
電子レセプト請求を行っている医療機関では、算定項目ごとに算定日を記載することが義務化されている。電子レセプト請求においては、チェック方法が、社会保険診療報酬支払基金と国民健康保険団体連合会では状況が異なるため一概に言うことはできないが、算定日記載がある事で、審査上に大きな影響が生まれている。
例えば、支台築造形成と同日のう蝕処置については従来の紙レセプトでは、実日数が複数日であれば、同日に行ったものかどうか判断がつかないため、査定の対象とはならなかった。しかし算定日記載がある電子レセプトでは同日に行ったものであることが分かれば当然、査定の対象となる。
また、切開と同日の歯周病検査については、従来の紙レセプトでは、実日数が複数日あれば、同日に行ったものかどうか判断がつかないため、審査の対象とはならなかった。しかし、算定日情報がついたレセプトでは同日に行ったものであることが分かるため、審査の対象となる。
他には、修形における浸麻算定が、形成時なのかあるいはセット時なのかでも算定の可否が変わる為、紙レセプトと電子請求では差異が生じる。その他、算定日記載によってチェックされると思われる事例はたくさん存在する。

【まとめ】
平成24年4月請求分から始まった算定日記載は、各算定項目の算定日を記録して請求を行うことで、審査の場で算定項目を時系列で並べて表示できるようになる。そのため、今まではチェックできなかった項目についても審査できるようになっている。そうなると、今までチェックできなかった項目についても査定・返戻を行うことが可能となる。また、現在は審査の対象になっていないと思われる項目でも今後の運用次第では対象が拡大される可能性もある。例えば、スケーリング、SRP後の歯周組織検査の時期など、審査上でレセプトを見て妥当性を欠くと線引きされた治療などは疑義を持たれる。
ただし、紙レセプト請求では従来通り、診療の算定日が見ないようになっている。紙レセプト請求医療機関がそうでないという訳ではないが、国の方針に積極的に協力して、高額なレセコンを購入している医療機関が、より厳しい審査を受けていることに疑問がある。突合審査、縦覧審査についても全く同様なことが起きている。東京都の地区歯科医師会では、会員のレセプトを提出する前に、誤った保険請求を減らすべく、地区歯科医師会の整備会によるレセプトチェックを行なっていたが、電子媒体になってからは請求の規格が統一していない為できなくなっている。
患者の病態や治癒状況は異なっており、同一患者でもその時々により全く異なっている。その症状を画一的に線引きし、機械任せで審査をするのでなく、人による審査が必要と思われる。統計調査や明らかに誤った請求を見つける為に、電子媒体を利用することは賛成するが、全ての審査を機械任せにしようとする、今の流れには疑問がある。

参考文献
1)厚生労働省保険局医療課「診療報酬請求書等の記載要領等について」
2)厚生労働省 オンライン又は光ディスク等による請求に係る記録条件仕様(歯科用)
3)電子レセプト請求における算定日の記載について 中医協
4)保険医協会「レセプト点検強化への対策」