1.平成28年度診療報酬改定について

28年度診療報酬改定について

平成28年3月17日 宮川 慎二郎

【はじめに】
いわゆる「団塊の世代」が全て75歳以上となる平成37年(2025年)に向けて、制度の持続可能性を確保しつつ国民皆保険を堅持しながらあらゆる世代の国民一人一人が状態に応じた安全・安心で質が高く効率的な医療を受けられるようにすることが重要である。
中医協において28年度診療報酬改定の個別改定項目の骨組みが議論された中、保険診療において歯科界がどのような方向性で進んでいくべきかを考察してみた。

【課題】
先ずは、2025年問題は避けて通れない問題である。人口ピラミッドの形態が変ってしまった。今まで医療保険を支えてきた団塊世代が高齢者になり、それを支える若い世代に負担が重くのしかかっている。また今後は人口の減少がおき、患者数(レセプト数)の減少は避けられない。また歯科医師の数も減り地域によって歯科医師過疎が起きると思われる。歯科医療とは削って、つめて、抜いて、作るだけという過去のイメージの脱却が必要であり、それらの全ては口腔機能維持であり健康向上の為の必須技術である。まさに今、国が進めている健康寿命の向上に直結する極めて重要な技術である事を国や国民に示していく事が重要である。
新規技術の保険収載についての問題も大きな問題と考える。このたび日本歯科医師会会長になられた、掘憲郎先生が中医協時代に気付かれ進めてこられた事項であるが、一月から保険導入されたファイバーコア等の新規技術の保険導入に関する事項である。
医科において多数存在する、新しい技術(C区分)の期中導入問題は見逃す事ができない。中医協において新しい技術が報告、議論され、導入された数がいかに歯科において停滞しているかという問題である。その中でもC区分において、医科において毎月のように新しい技術が承認されているのに対して歯科では長年にわたり全く承認どころか報告もされていなかったことである。C区分の導入とは、例えば前回の改正で新しい技術として導入されたCAD/CAM冠レベルの保険導入が改正時以外で毎月何件も医科では導入されているという事である。
歯科界のこれまでの認識としては、診療報酬改定時に学会分科会から、医療評価提案として提出し保険導入するかどうかを中医協で議論する方法か、新しい技術として評価療養に入れて大学病院から、手をあげて頂く方法であったが、改定時以外でも保険導入される仕組みを利用していく必要がある。C区分以外でも、臨床検査の項目であるE区分においても、検査の区分が医科とは異なり簡単な事ではないが、歯科分野が入り込める可能性を秘めている。
新しい歯科独自の病名、症候群的な病名等を提案していく必要がある。例えば噛み合わせの悪い患者さんを治療し姿勢が変わったり、顎関節症等でマウスピースを使用し、患者さんから頭痛も良くなったと言われた経験があると思う。もしこのような処置が病名として認められれば、病名を付ける為の検査、治療器具またそれに対する技術料、材料料が生まれてくる。まだまだ、他にも沢山の病名が考えられるが、歯性腰痛、歯性脊椎側彎症等も面白い病名と考える。
しかし、C区分、E区分に限らず、中医協で取り上げられ、承認される為には歯科界の常識だけでは通らない話で、きちんとしたエビデンスが必要である事も忘れてはならない。その為に大学病院等、研究機関との連携も忘れてはならない。

【まとめ】
他にも4根管又は桶状根に対してCT撮影が根充に加算、大臼歯に対するCAD/CAM冠が金属アレルギーを有する患者に限定し認められ今回導入される予定であるが、前回までに改定に導入されている乳歯保隙装置、レーザー治療に関しても問題が多いと思われる。 ファイバーポスト、レーザー治療、CAD/CAMにおいて、限られたメーカーの物を使わなければならないし、大臼歯のCAD/CAM冠には医科医療機関の医療連携における診療情報提供が必須で煩雑である。乳歯保隙装置おいて、保隙をする為に強固な永久歯を認めず支台歯が乳歯のみに限られている。また、施設基準のハードルが点数に見合わず高い事。 医科では約70種ある管理料にほとんど文書提供が無いのに、歯科では文書提供が必要な事等根本の問題であるが、歯科治療の特異性である技術料が重要と思われる。
このように、課題の多い診療報酬改定を一人一人の会員が注意深く関心を持つ事が正しい保険診療に結びつくと考える。